「最近の子は…」昔も今も、自分たちの時代では見られなかった子供や若者の行動に対して、よく大人は苦言を呈します。最近の傾向では、草食系を代表するように「弱くなった」という類いのものをよく耳にします。確かに、最近の子たちを見ていると問題に突き当たるとすぐあきらめ、挙げ句の果てにキレるケースがしばしばあります。ここに欠けているのは問題解決力です。

小さいときから幼いなりに社会にもまれていると、ある程度の問題解決力を自然に身につけられるはずですが、そうではなく大きくなってしまったのでしょう。会社の新人研修や大学のセミナーでも問題解決力を伸ばすための講義が行われることがあるのは、こういった背景があるからだと思います。では、子供のうちから問題解決力を伸ばすにはどうしたらよいのでしょうか。

問題解決力を伸ばすためのポイント

まずは、問題解決力とは何か考えてみましょう。簡単に言うと言葉の通り、問題を解決する力なのですが、そこにはトラブルと解決する力だけでなく、目標を達成するために考え行動する力という意味も含まれます。

すなわち、問題解決力には問題の本質を見つける分析力や調査能力、解決するにはどうしたらよいか考える思考力、発想力および思考を整理する能力、考えた結果をもとに解決するために行動する力が含まれます。これらの過程では、創意工夫や自己表現力が必要になります。問題が一人で解決できないことならば、周囲への順応性や周囲との協調性も必要です。したがって、問題解決力を伸ばすにはこれらのスキルを高めることが大切です。

問題解決能力を伸ばす方法

子どもの問題解決力を伸ばす具体的な方法を考えてみました。

○シミュレーションをしてみよう

子どもが幼いうちは、生活の中で起きた出来事にどう対処してよいのか分からず戸惑っている様子がよく見られます。経験が乏しく思考力も未熟な幼い子には、問題の解決法をいきなり教えてしまうのも一つの方法です。

学校などで行われている避難訓練はその代表例。火事などが起きたことを繰り返しシミュレーションすることで、小さい子でもどのように対処したらよいか学ぶことができます。そして、大きくなるとこのシミュレーションの経験を他の問題解決に応用することができるようになります。

○考える習慣をつける

自己中心的で客観的視点に欠けるのは子供の特徴です。しかし、これを放置するのではなく客観的視点に立つことを教えてあげることで、子供の問題解決力が高められます。

例えば、「おもちゃを貸してとA君に言ったら、叩かれた」とB君が泣きついてきたとします。この言葉だけを聞くと、大人は「何も叩かなくても…」と思ってしまいますね。ポイン
トはここからです。

「お母さんがA君になるから同じように言ってごらん」と言ってみましょう。その後、お母さんがB君になり、B君にはA君になってもらいすっかり同じことをします。B君はどんなことを感じるでしょうか。もしかしたら叩いたA君の気持ちがわかるかもしれません。この方法では、小さい子でも客観的視点に立ち相手の気持ちを考えることができます。相手の気持ちがわかれば解決方法も見つけやすくなります。

このように親や周囲の大人、友達とコミュニケーションをとりながら、相手の立場にたって物事を考える習慣をつけてみましょう。物事の表面上だけでなく奥にある本質を見出す力がつき、それは問題解決力につながります。

○引き出しが多ければ答えも見つかりやすい

仮に考える力があっても、知らなければ考えも及ばないことはたくさんあります。人間の思考は、見聞きしたこと、そこから推測・想像したことを中心に成り立っています。そのため、生きている時間が短い子供が、経験不足により適切な答えを見つけられないのは当然です。

子供には生きている時間の短さを補う多種多様な経験を積ませることで、思考の引き出しを増やし問題解決力を伸ばすことができます。子どもの吸収力はすごいもので、泥遊びや水遊び、自然とのふれあい、お家でのお手伝いなどは問題解決力を伸ばす大切な経験です。どんな経験も子供にとって糧になるので、大人はできる限り不要な制限をせず見守りたいものです。

社会を知らない子供には、思考の引き出しを増やすため大人が新しいものに触れさせてあげるのも効果的です。動物園や水族館、遊園地や科学館などで新しい経験をさせてあげましょう。特別な場所に連れて行かなくても、電車に乗る、いつもと違った道を通るといったことでも子供には十分な刺激になります。

○幼いうちから集団になれさせる

集団の一因となることは、社会性を身につける上で大切なことです。集団に入ることで順応性が鍛えられ、協調性の大切さを学びます。助け合いの精神やお互い様の精神も学べます。日中はお母さんと二人っきりというような生活に比べ、集団の中に入り同時にたくさんの問題に突き当たることで問題解決力も高まります。人が直面する問題には、一人で解決できないものがたくさんあります。

そんな時、集団の中で身につけた力がきっと発揮されることでしょう。また、子供は早くから集団に慣れさせた方が、その中で生きていくすべを学び問題解決力も伸びるといわれています。

この集団の中に入れることで問題解決力を高めるのにおすすめなのが、芸能事務所などで行われているレッスンです。レッスンの中には周囲とのかかわりを大切にするもの、問題を自分で乗り越えるようなものなどが含まれ、楽しみながら学べる工夫がされています。芸能事務所のレッスンは、芸能人になろうという明確な意思がない子でも将来役立つ要素がたっぷり詰まっています。

問題解決力が高いと将来も有望

問題解決力の高さはどんなことに活かされるのでしょうか。代表的な集団生活である長い学校生活でのつまずきが少なくなります。学校生活は友達とのかかわり、学業、将来などたくさんの問題とのかかわりになります。問題解決力の高さはこれらを乗り越え、しっかり前を向くことにつながります。

社会に出るとその差はより明らかになることでしょう。問題解決力は企画力、営業力、交渉力などにつながります。仕事で困難にあたった時、投げ出さず粘り強く的確に解決する様子は、きっと評価されることでしょう。着実に問題をクリアしていく様子は周囲からの信頼にもつながり、社会での活躍が期待できます。